背景
2017年から段階的に始まった中国の廃棄物の輸入規制は、国内外の廃棄物処理・リサイクルフローに大きな混乱をもたらしています。特にプラスチックの処理については世界的に中国への輸出に依存していたため、規制以降、国内においても行き場を失ったプラスチックが既存リサイクル業者の処理能力を超え、年間で約100万トンのプラスチックが新たな適正処理体制の構築を必要とするようになり、国内のリサイクルの処理能力を超えたため、焼却処分などになったケースが目立ちました。
近年注目を集める、海洋プラスチック問題とあいまって、プラスチックのリサイクルへの需要が高まっています。
お客さまのニーズ
日本国内でのプラスチックのリサイクルは、サーマルリサイクル(熱回収)の比率が高く、高度なマテリアルリサイクルは主流ではありません。一方で、国際的には、プラスチックリサイクルとはマテリアルリサイクルによりリサイクル原料として生産プロセスに戻すことと考えられ、サーマルリサイクルはリサイクルの定義に含まれません。EU発のサーキュラー・エコノミーの議論が活発化する中、日本国内でも、特にCar to Carの水平リサイクルを目指す自動車業界、および家電業界からも、プラスチックの高度なマテリアルリサイクル技術を備えた事業者の必要性が指摘されるようになってきました。
ヴェオリアのソリューション
イノベーション
ヴェオリア・ジャパン株式会社(現ヴェオリア・ジャパン合同会社)が豊田通商株式会社、小島産業株式会社と共同で設立した合弁会社「株式会社プラニック」がこの度新設する工場では、2016年に環境省の主導で行われた実証実験で対象となった、重液・軽液を用いてミックスプラスチックからPP、PE、PS、ABSを取り出す高度選別技術を日本で初めて導入しています。
新工場は静岡県御前崎市に立地します。株式会社プラニックは、自動車の破砕後物(ASR)、家電製品の破砕後物、メーカーや小売店で自主回収されたプラスチック使用製品、工場や物流拠点などから排出される資源プラスチック等、各種ミックスプラスチックを中心に原料として受け入れ、前述の高度選別技術を用いて再資源化し、自動車業界や各種業界の資源循環に寄与することを事業目的としています。
さらに、2022年4月施行の「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック資源循環促進法、プラスチック新法)」の認定制度※を活用し、これまでコスト面、コンプライアンス面で難しかった広域での回収、リサイクルを目指しています。
※認定市町村の再商品化実施者として再商品化を実施、認定再資源化事業者、認定自主回収・再資源化事業者の委託を受けることを検討しています。
4万トン
の年間処理能力
2万5,000トン
の年間製造能力
使用する技術
- 湿式比重選別(重液選別、軽液選別)
- 静電分離選別
- コンパウンド技術
- 粉砕、破砕技術
- 一貫製造ラインによる効率化
お客さまのメリット
環境パフォーマンス
- サーマルリサイクルからマテリアルリサイクルに切り替えることでCO2排出量を削減
- カーボンフットプリントの大幅な削減:製造業のお客さまは、リサイクル材を使用することでバージン材に比べCO2排出を抑制
- プラスチック資源循環促進法の認定制度を活用し、管理効率、運搬効率を向上することで工場全体のエネルギー効率を上げ、バージン材の製造プロセスと比べ気候変動への影響を大幅に削減
経済パフォーマンス
- プラスチックの安価で安定的なマテリアルリサイクル:中国の輸入禁止措置の影響を避け、安定的なリサイクルを可能に
- 再生資源プラスチックの安価で安定的な調達:資源プラスチックの導入による、調達コストの削減
社会パフォーマンス
- マテリアルリサイクル率の向上による、サーキュラー・エコノミーの推進
- ユーザーからのプラスチック製品の自主回収、リサイクルによるESG、企業価値の向上
事業概要
工場所在地: 静岡県御前崎市
事業分野:プラスチックリサイクル
稼働開始
2022年夏(予定)
主要取引先
製造業およびサービス業、リサイクル業
ヴェオリアの専門性
廃プラスチックリサイクル
地球環境の保護
リサイクルは、バリューチェーンのすべてのステークホルダーを巻き込んだ取り組みです。例えば、
- 原材料の一部にリサイクル材を使用する自動車や家電製造業
- リサイクル材の使用の有無により購買行動を決定すると同時に使用後製品をリサイクルのループへと戻すことを保証する消費者
- 製品プラスチックを収集しリサイクル施設へと運搬する収集運搬業者
- 集まった使用済みプラスチックを選別し、品質を維持しながらリサイクル材へと加工するリサイクラー
- リサイクル材を自動車や家電に使用するために加工する加工業者