サーキュラー・エコノミーとは?
サーキュラー・エコノミー(循環型経済)とは、活用されていない資源から価値を生み出す概念です。製品が、耐用年数を迎えたら廃棄物として処分するのではなく、生産サイクルに再投入することで、資源を削減、再利用、リサイクルするという、持続的な事業発展に向けた理念を指し、近年注目を集めています。サーキュラー・エコノミーの考え方の下では、製品を再使用して埋め立て地のゴミを減らすのにとどまらず、製品やサービスのデザインから資源の再利用までバリューチェーン全体での再設計することを促します。具体的には次の3つの原則に基づきます:
- 廃棄物や汚染を排除する設計
- 製品と原料を使用し続ける
- 自然システムを再生産する
リニア・エコノミー VS サーキュラー・エコノミーとは?
従来の生産プロセスは、資源を採掘し、作り、捨てるという直線的な”take-make-waste”アプローチに従っており、長年にわたって自然環境と天然資源への大きな負担をもたらしてきました。
このことから今やこのようなリニア・エコノミーシステムは時代遅れであり持続不可能と考えられています。
サーキュラー・エコノミーシステムでは、寿命を迎えた製品は新しい用途のために再生産されるか、使用済み製品から原料を回収し新しい製品の一部になるように設計されます。 限りある資源をどのように生産、消費し、寿命を延ばすかを再考することで、原料を継続的にリサイクルまたは活用し、資源の節約、供給を保護することができます。それだけでなく原材料の価値の最大化、二酸化炭素排出量の削減にも貢献しています。
経済モデルをリニア・エコノミーからサーキュラー・エコノミーに移行することで、”take-make-waste”(採って、使って、捨てる)を”made to be made again”(再び作ることができるように作る)に変えることができます。
サーキュラー・エコノミーがなぜ大切なのか
世界で供給できる資源の量は限られています。 資源の一部は再生されるとしても、私たちが資源を採掘する速度に追いつくことはありません。 きれいな飲料水、高品質の土壌、天然ガス、鉱物、貴金属など、これらの有限の資源の多くは不足しつつあります。 過去40年間で、原材料の年間世界抽出量は3倍になりました。
2050年までには、世界中の資源に対する需要は1,930億トンになると予測されていますが、これは2019年時点での中国、アメリカそして日本の総消費量に相当します。
サーキュラー・エコノミーをビジネスモデルに取り入れることで、企業は地球の自然の保護に貢献すると同時に現在日々のオペレーションに消費している原料や資源からより多くの価値を引き出すことができるようになります。さらに以下のようなメリットがあると考えられます:
- サプライチェーン全体のコストを削減し安定的に価格を改善する
- 顧客の変化と市場のシフトを満たすことで、業種内での変革を主導するパイオニアとなる
- 法規制や社会からの新たなニーズに対応する
- ポジティブな変化についてのメッセージを伝え、社内外での意識を啓発する
- 顧客のロイヤリティを増やし、より良いブランドイメージをつくる
サーキュラー・エコノミーが社会全体の注目を集め始める一方で、経済活動と環境という面では、日本では様々な背景から低炭素社会への移行がすでに始まっています。そのため今や低炭素の達成は日本社会にとっては企業が当然果たすべき努力と考えられています。
日本政府は、2050年のカーボンニュートラル達成を宣言した
サーキュラー・エコノミーへ転換することによる経済へのインパクトは?
サーキュラー・エコノミーモデルを活用することで、企業、都市、政府は資源の保護、成長の促進、雇用の創出、物資寿命の保護および延長、二酸化炭素排出量の削減に貢献しています。 サーキュラー・エコノミーのアプローチを実際に行うには、リソース管理の専門的なスキルと推進力が必要です。
地球への影響を削減しサステナビリティ目標を達成する
S&P 500(上場インデックスファンド米国株式)に含まれる企業の90%が2018年にサステナビリティレポートを発行しました。そのうち95%の企業が環境パフォーマンスを開示しており、67%が特定の期間での環境目標を環境パフォーマンスと紐づけています。これらの数字から、企業の考え方が転換し、循環型のビジネスの展開により価値を創造していくことに舵を切っていることがわかります。
コスト削減と資源効率
コスト削減と運転効率は、サーキュラー・エコノミーの取り組む上での直接的なメリットとなります。資源を最大限に抽出することで投資収益率を改善または新たな収益源を創出します。
消費者の需要
消費者の環境意識の高まりにより、多くの有名企業がサプライチェーンの開示や透明性の向上に向け、自主的な取り組みを行うようになりました。 今後企業はエネルギー源だけでなく、製品の製造方法や使用方法についても考えなければいけない時代がきているのです。
環境方針と法規制
資源は有限ですが、人口は増加し続けています。 より効率的な資源の活用が必要であることは疑いありません。 企業は、サーキュラー・エコノミーを実現するソリューションを取り入れ、一般の人々に対して社会的責任を果たしていることを示すことで、競争優位性を得ることができます。 できるだけ早くこのようなソリューションを導入することで、規制の強化に直面した際に、より時間をかけてサーキュラー・エコノミーへの移行に向けた最適な計画の構築に時間をかけることができます。
サーキュラー・エコノミーへの移行がビジネス上の様々なリスクを低減する
リニア・エコノミーは、将来に渡り一定の天然資源の供給が可能であるということを前提としています。しかし、天然資源は有限であり、リニア・エコノミーモデルを続けることは、上記のメリットを実現する機会を逃すだけでなく、販売の優先順位付け、安価で再生不可能な資源の利用、業界や社会にとって有益なパートナーシップの構築の失敗など、リニア型ゆえに起こりうるリスク要因の影響とリスクそのものの増大を意味します。
一般に、これらのリスクは、マーケット、オペレーション、ビジネス、法務の4つの主要なリスク要因に分けられます。これらはすべて、それぞれ異なる状況でリニア型のビジネスを妨げる可能性があります:
マーケットリスク
マーケットリスクは、需給のバランスにより影響度が変わります。貿易摩擦や供給不足があった場合は、業績に重大な影響を与える場合があります
オペレーションリスク
サプライチェーンでの問題発生などのオペレーション上のリスクは、企業の業務プロセスに混乱をもたらし、その結果業績に甚大な影響を及ぼす場合があります
ビジネスリスク
ビジネスリスクは、社会的あるいは政治的な結果として発生します。消費者意識の高まりがニーズを形作り、ブランドはそれらを満たすコミットメントを求められています
法務リスク
法務リスクは、法規制の不遵守から発生します。気候変動に関する法規制がますます厳格化する中で、企業は規制の要求事項に合致するためのコスト、あるいは法規制違反に対する罰金のためのコストという問題に直面することとなります
サーキュラー・エコノミーは、リニア・エコノミーのリスクを軽減するソリューションを提供するだけでなく、企業の差別化と競争力の向上につながります。WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)は2017年、調査対象企業の80%が、競争力を高め成長を加速することがサーキュラー・エコノミー戦略をとる主要なドライバーであると回答したと発表しました。残りの20%の企業は、リスク低減がドライバーとなりサーキュラー・エコノミーモデルへ移行したと回答しました。このようなメリットを認識するためには、ビジネスにサーキュラー・エコノミーを取り入れていく具体的な方法を考えていくことが必要となります。
サーキュラー・エコノミーをビジネスに適用する
サーキュラー・エコノミーのコンセプトがビジネスを成功に導くためのヒントがあります。
データをみて意思決定をする
企業の構造やプロセスはそれぞれ異なりますが、現在の資源使用状況を評価し、現在のプロセスにサーキュラーなコンセプトを適用することで、効率を最大化し、廃棄物を削減する独特のチャンスがそれぞれにあります。関連するすべての生産データを収集して、自社のプロセスでどんな資源がどのように使用されているかを全体的に把握します。
あらゆる”循環”を考える
サーキュラー・エコノミーは様々な形態で展開されており、常に進化し続けています。このコンセプトをクリエイティブに応用することで、コスト削減だけでなく、地球上の限られた資源全体にも影響を与えることができます。資源回収、共有モデル、製品寿命の延長、製品モデルとしてのサービス、サーキュラー供給モデルは、すべて異なる方法で循環性を示しています。
ステークホルダーを巻き込む
直接的および間接的なステークホルダーを特定してみてください。サーキュラー・エコノミー型プロセスへの移行は、どのようなパラメータで評価されるのでしょうか?あなたの会社はすでにサステナビリティに関する目標を設定しているかもしれませんが、それがどのような変化が起こることを念頭に設定しましたか?このような対話は、サーキュラー・エコノミーのイニシアチブを見通す上で重要な役割を果たすため、早期にステークホルダーを巻き込む必要があります。
専門家に相談する
サーキュラー型ビジネスモデルへの移行においては、リサーチ、対話、デューデリジェンスなどのプロセスが重要と考えられています。ヴェオリアは、適切なデータを収集し、新たな視点から潜在的な解決策を見出すプロセスを支援します。サーキュラー型ビジネスモデルに向けた活動の組み合わせは無限にありますが、実施すべき適切なプロセスを見つけることは簡単ではありません。
サーキュラー・エコノミーと水
気候変動と人口増加により、私たちの水資源に対する需要は急増しており、責任ある水資源の管理が必要になっています。 水ストレスのある地域では規制を強化する必要があるため、業界と自治体の両方がより効率的で費用効果の高い使用法を模索しています。
水資源の循環という目標は同じとはいえ、それぞれの水源の状況は異なり、また廃水の出る過程や水質もそれぞれが異なるため、独自の処理と排水品質の特定の基準が必要です。
環境影響への意識が向上するにともない、限りある天然資源を保護し、再使用し、再生産するために私たちがそれぞれ重要な役割を果たす必要があります
生活で消費する
都市部の人口の増加に伴い、下水量は増加します。 これを負担とみなすこともできますが、持続可能なクローズド・ループ戦術を通じて資源を回収する機会と見なす自治体もあります。 廃水から最大の価値を引き出して再利用可能な副産物を生成するバイオソリッドおよび残留物プログラムは、都市がサーキュラー・エコノミーの目標を達成するのに役立ちます。 堆肥、肥料、バイオ燃料などの再生資源は、運用コストを相殺し、埋め立て地に送られる汚泥の量を減らし、化学肥料の代替とし、再生可能エネルギー以外のエネルギーの使用を制限することができます。
工業プロセスで消費する
生産プロセスに必要な水の量とその結果生じる廃水は、多くの工業で重要な要素です。 水の使用と廃水管理は業績面においてのみならず環境面でも重要です。 従来の生産プロセスは、資源を採掘し、作り、捨てるという直線的(リニア)な”take-make-waste”アプローチに従ってきました。 しかし、世界人口の増加が続く現代において、サーキュラーモデルに移行しない限り、需要が必要な供給量を超えてしまいます。
資源をより循環的に消費するために、すべての生産システムにおいて可能な変化を積極的に探求する必要があります。 多くの製造プロセスでは、水が必要となります。 たとえば、タービンエンジンをかき混ぜるための蒸気を生成するために使用され、タービンエンジンは電気を生成します。 また、大規模な製油所でもオフィスビルでも、水は冷却剤として使用されています。
たとえば、石油・ガス業界は、コミュニティにエネルギーを提供しながらサステナビリティ目標を達成するため、独特の課題に直面しています。 油田では、地面から出てくる石油1バレルごとに5倍の量の水が生成されます。 この水は、処理後に製造プロセスで表面放電用として再利用したり、プロセス水として再利用するなど、すべてが再利用可能です。
方法は様々ですが、目的は同じです。生産された水はそこで役割を終えるのではなく、私たちは限られた資源の中で新しい目的、価値、機能を見つけ続けるべきです。
原油は採掘後、製油所で処理されます。 油が抽出された副産物として、油性スラッジが生成されます。 かつては、埋立か深井戸投棄のみが廃棄物の適正処理フローと見なされていましたが、今では、技術革新により、回収可能な水やその他の貴重な資源とともに、これまでは廃棄されていた部分の石油も抽出することができます。
サーキュラー・エコノミーと廃棄物
全ての業界において廃棄物は発生するので、サーキュラー・エコノミーは、業界を超えて拡大する一連の基準および慣習となります。 廃プラスチックをリサイクルすることで食品や飲料のパッケージや容器に生まれ変わる場合でも、日常で古いスマートフォンを正しくリサイクルする場合でも、どんな場合も廃棄物は常に存在し、増え続けるため、責任を持って管理することが求められます。
1970年代後半から80年代前半の環境規制は、管理方法を規定することによって環境を保護しようとしました。 これらの法規制は、廃棄物を一般廃棄物と産業廃棄物の2つに分類し、企業に対し新たなコストを課したため、企業や業界はコストを削減の一環として廃棄物の発生量と毒物含有量を減らしました。
今日、私たちは、確固たる成果を得る成熟した生産プロセスを持っています。 しかし、以前はリニア型のプロセスであったところに、サーキュラー・エコノミーの概念を適用することで得られるメリットがあります。
廃棄物を再考する
「廃棄物」は、今や固有の価値を持つ素材として考えられるようになりました。 非有害廃棄物の場合、混じり合った価値の高い成分のリサイクルを可能にするため、どの段階で分別できるかを調査することからはじまります。 このアプローチの潜在的な成果は、原材料の全体像を捉え、埋立処理ゼロの目標とごみゼロの達成を示唆しています。
有害廃棄物も同じモデルで評価することが可能です。 最も価値の高いリサイクルとしては、二次材料市場での有益な再利用、販売、取引、またはその他の機会での使用があります。 混合廃棄物の分別は次のステップとなります。手間がかかりますがが、リサイクルが容易な、または価値の高い材料を得ることができます。
工業プロセスから発生する廃棄物の多くはリサイクルできませんが、含まれる成分が高い発熱量を保持しています。 このような廃棄物は、セメントの製造における化石燃料の代替となります。様々な種類の廃棄物を燃料として混合できるため、廃棄物を単に処理するよりも環境にやさしいプロセスとなります。
リサイクルできるのは有機性廃棄物だけではありません。 多くの無機材料は元素で構成されているため、リサイクルに適しています。 鉛バッテリー、電子機器、照明、メッキはすべて、寿命が尽きたときにリサイクルできるアイテムの例です。 これらには、再生してクローズド・ループシステムで利用できる貴金属が含まれています。
廃プラスチックへの注目
プラスチックの生産量は着実に増加しており、2050年までに3倍になると予想されていますが、現在リサイクルされているプラスチックは総使用量の9%と言われています。一方で、これまで廃プラスチックの輸入国であった中国が2018年以来廃プラ輸入規制に踏み切り、廃プラスチックを含む固体廃棄物の中国への輸出が禁止されることになりました。加えて、バーゼル条約改正によりリサイクルに適さない汚れたプラスチックごみが規制対象に追加されることから、日本国内で発生する廃プラスチックを日本国内でリサイクルすることが必要となります。
この動きに合わせて、各飲料製造業のブランドオーナーは、次々と、持続可能なPETボトルの利用に関する目標を掲げてきています。プラスチックのリサイクルも、サーマルリサイクルから、マテリアルリサイクルにより原料に戻し、プラスチックのクローズド・ループで利用していくことが一層求められるでしょう。
使う
「使う」ことにも、サーキュラー・エコノミーの考え方が適用できます。現在、廃棄物および副産物は、原料として製造プロセスに戻すか、原材料として別の会社に販売されるか、あるいは廃熱利用などできる限りの再利用と転換が行われるかの後、最終的な選択肢として埋立を含む処理が行われます。経済協力開発機構(OECD)の提唱する拡大生産者責任プログラムは、リサイクルに適した材料と再生製品の市場を創出する規制をドライバーとして、リサイクルと再利用を推進しています。
生産プロセスをクローズド・ループ・システムに再設計することで、かつては「廃棄物」と見なされていた副産物が、継続的なループで生産システムに戻すことができる資源として再利用されるようになりました。そして、このクローズド・ループ・システムを実現するために、製品の寿命を延ばす技術に投資し、非効率的な生産プロセスを分析されます。このようにして、貴重な資源を節約し、コストを削減し、持続可能性の目標を達成するために、再利用、回収、またはリサイクルするための機会がどこにあるのかを特定します。
サーキュラー・エコノミーとエネルギー
有機物からのエネルギー - 廃棄物からバイオエネルギーを作り出す
サーキュラー・エコノミーに関連する目標を戦略計画に取り入れ始める日本企業や都市の増加に伴い、グリーンエネルギーの活用と廃棄物を削減を同時に叶えるようなソリューションへの関心が高まっています。 実際、経済産業省は、エネルギー資源への手頃なバイオ電力、バイオ燃料、およびその他の廃棄物の生産を可能にするために、バイオエネルギーの研究開発プロジェクトに272億円の資金を提供すると発表しました。
廃棄物をエネルギーへと転換するソリューションは、廃棄物の最終目的地として埋立処理の割合を減らし、再生可能エネルギーを生み出すと同時に、化石燃料への依存を減らすことを可能とします。これにより、企業と地方自治体の廃棄物削減と温室効果ガス排出量削減といった2つの目標の達成を一つのソリューションが支援します。 さらに、生産したバイオエネルギーを売却することで、エネルギーコストを節約したり、利益を上げたりすることができます。
長期的なグローバルパートナーシップ
ヴェオリアは、サーキュラーエコノミー経営に積極的に取り組むグローバル企業と長期的なパートナーシップを締結し、サーキュラーエコノミーの実現及びお客様の事業成長に向けて共に取り組んでいます。
グローバル・パートナーシップ ※:ダノン、ユニリーバ、テトラパックなど
参加団体:Alliance to End Plastic Waste (AEPW)、エレンマッカーサー財団、クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)
※ 国際的に展開する企業に対し、ヴェオリアがグローバルネットワークを活用し、均一なサービスを提供するコミットメント